ジャム

 今朝は急いでいたのに、そういう日に限って、ばあちゃんは何かをしでかす。
 ばあちゃんの部屋のこたつテーブル(ホームこたつの夏の姿)の上に、おかずパックが置いてある。せいろ丸を入れて「これはせいろ丸。下痢のときに飲む」と書いたメモを入れてあるのだ。砂糖が1㎏入るだけのちょっと大きめで、半透明の四角の容器だ。いつもは、テレビの下の台にのせてある。
「ばあちゃん、これはせいろ丸よ。今は下痢してないでしょ。いらないから、テレビの下に置いとき」と言いながら、パックを開けて中身を見せようとしたのだった。パアクの中には、せいろ丸のほかに、ジャムのびんがある。梅ジャムだ。ばあちゃんが、冷蔵庫から持ち出して、隠したが最後、忘れてしまったのだ。色が変わり、発酵しているみたいだった。
 いつから?作ったときだろう。食べたのはそのときだけで、すぐに忘れたのだろうね。食いしん坊のくせに、隠すから忘れる。