講演『長谷川式簡易知能評価スケールの実際』

 講師:兵庫県作業療法士会 梶田博之先生
 まず「作業療法士」というのは知名度が低い。「理学療法士」のほうが知られている。しかし、認知症の人とかかわる場面では「作業療法士」の方がメインになる。
1.「認知症」の診断には 
(1)記憶障害がある。 
(2)失行、失認、失語、実行機能障害のどれかがある。 
(3)そのために社会生活に支障をきたす。
(4)上記の状態の脳などの身体的な原因があるか、あると推測できる。
(5)意識障害はない。
 以上であり、「長谷川式簡易スケール」や「MMSE」は含まれない。参考にはされる。

2.改訂長谷川式簡易知能評価スケール 1991年
 *認知症高齢者をスクリーニング(発見)する目的で作成された。
 *所要時間が5分から10分という短さが広まった理由である。
 *得点20点以下で「認知症の疑い」・・・実際には20点以下の90%が認知症であり、逆に言うと10%は認知症ではない。
  20点以上の訳82%が「正常」と言われる。つまり確定ではない。参考である。
 *記憶に関する評価項目が多い。
 (注)実際の評価用紙は本などに載っているが、「名前」「年齢」などを問うので始まり、「100−7=いくら」という計算や、物の名前を3つ言って覚えてもらう、などである。検査者が事前に知っておくのは相手(検査を受ける人)の年齢だけという手軽さがある。

3.MMSE 1975年
 *国際的に最も広く用いられている。
 *11項目の質問の中の4項目が動作性である。(動作をしてもらう)
 *所用時間が10分であるのが、ここまで広まった理由。
 *合計得点は受ける人の年齢や教育歴の影響を受ける。
 *得点23点以下で「認知障害」・・・23点以下の83%が認知症
  24点以上の90%が正常

4.テストに関して
 +軽度の認知障害者を発見しにくい。
 +ピック病の初期では記憶、見当識、計算力は保たれるため、早期に発見しにくい。
 +認知症が進んでくると、意欲が低下しやすい。やる気がなければ本気でテストに取り組まない。日差しや薬物の副作用による覚醒状態による影響を受ける。テストに対する苦手意識もある。
 +テストをすることによって、本人にメリットはない。こちらの都合でやっている。本人の本当の能力が評価されにくい。
 +本人が「馬鹿にしているのか?」とか「いややのに、なんでさせんねん?」と思うと、反感や不信感がつのり、不満がインプットされる。その結果、リハビリに取り組む意欲がなくなる。
 +作業療法士としては、じつはこういうテストは嫌いだ。制度上、とらなくてはいけないときはするが、やらなくてもすむならしない。
 +1点や2点、得点が高いからといって、能力が高いとは言いきれない。得点により重症度は分類できない。
 +合計点が同じでも、現れる症状や、それにともなう介護量は大きく異なる。
  「得点が高い」イコール「介護が楽」とは限らない。
  「得点が低い」イコール「介護が大変」とは限らない。
 +ただし、得点に加え、「テストのどの項目ができていないか」、「テストにどのように取り組んでいたか」、は一つの参考資料にはなる。

5.認知症の早期発見、早期介入の重要性
 *薬は症状を穏やかにする。だから、早い段階で服用した方が効果的。
 *症状が進行すると、身体機能、意欲が低下する。だから、能力の低下していない段階で、いろいろなことに取り組む。作業療法が効果的。
 *症状の進行の遅延を加納にし、患者や家族に、より良いケアの選択肢を提供することを可能にする。