「発達障害に気づかない大人たち」を読んで

 筆者の星野仁彦さんも「発達障害をもっている」と書いておられる。高校までの学業では困ることがなかったが、大学に入って下宿したときに、初めて自分の生活がコントロールできず、部屋が散らかし放題になったり、約束を忘れたりして、自分のアンバランスに気がついた。そして、選んだ道は医者であり、よき伴侶を得て、その方に生活のほとんどを、つまり家計のきりもりから仕事の執筆の清書までやってもらっている。
 「脳の発達がアンバランス」であるというのが障害だという。子どもの成長には、算数・国語などの学業成績に示される「認知や記憶能力の発達」の他にも「社会性(対人スキル)の発達」「感情、情動や行動のコントロールの発達」「運動(特に協調運動)の発達」などの重要な要素がある。
 そのどれかの発達が遅れていて、生活や学習の場面で困る子供たちに、適切な配慮や援助をして、将来、困ることの無いようにしようというのが、特別支援教育なのだと思う。
 子どものときに「発達のアンバランス」が見逃されて、適切な援助が得られないまま、大人になって、就職や結婚などの場面で困った事態になる例が発見され、研究や教育が進んできたのだと思われる。